ドイツの医療現場から

ドイツ在住の医師として、欧州や日本の今置かれている状況を、日本の皆さんにわかりやすく情報をお伝えすることを目的としています。遠く離れていても自分にできることを。

社会的距離の取り方 - やむをえず出勤しなければならない人たちへ

緊急事態宣言が出された今も、仕事が休ませてもらえない、ホームオフィスにできない、それでは経営が成り立たない。そんな悲痛な声が各地で聞こえます。外出してはいけないとわかってはいるけれど、上司の理解が得られない、いきなりホームオフィスにするなんて無理、稼げなくなったらまず自分が生きていけない…。

でも皆さん、まずはいまいちど、その仕事・外出、
本当に「命に代えても」必要なのか
よくよく考えましょう。
全国の感染症ベッドは既に埋まりつつあります。
感染者を増やさないことが、
なによりもなによりも 大切
です。

医療の立場から言わせてもらうと、まずは命あってのお金で、命あっての仕事、だとは思いますが、でもそれでもコロナショックで倒産した、家賃が払えない、お客が減って仕事が成り立たない、生活がかかっている方々の悲痛な思いは痛いほどわかります。

そんな人がどうしたらいいのか、医療職の人が意識していること、海外の人たちが実際にしていることなどを中心に出来る工夫ををまとめました。

 

 

*まずもう一度考え直してください。その外出必要ですか?

残念ながら医療崩壊は既に始まりました。現場の医師からは、1週間以上家に帰っていない、発熱患者のたらい回しが起こっている、外来がパンクしている、それなのに重症化する患者さんたちはどんどん増えている、といったこちらも悲痛な声が聞かれています。マスクなどの絶対に必要な物資も足りません。このままでは絶対必要な方々に対する医療を継続することすら難しくなってしまいます。

まずは徹底した外出自粛。
今の日本のやり方は正直甘い。

今の状態ではおそらく感染拡大を食い止めるのは難しいと思われます。

命をかけて戦場にいかなければならないとわかっていて、それでも外出しなければならない人たちへ。

諦める前に今できる最善の方法をとりましょう。感染のリスクを下げるためにできる限りのことをしましょう。そして少なくとも自分と、自分の大切な人たちだけでも守れるようにしましょう。

経済との妥協の中で、出来る最善の選択肢を。

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電車の中での距離の取り方。向かい合わない、距離を置く、話さない。

*公共交通機関の使い方

公共の交通機関は「3蜜」がフルで揃う最高に危ない環境です。まず、20-30分で着けるなら乗ることを避けて歩きましょう(むしろより健康的!?)。どうしても乗らなければならない人は、以下のことを意識してみましょう。

  • 人が多い時間帯に乗るのを避ける
     (例:普段より1時間早く/遅く出かける、
    勤務時間を7:30-15:30にする、
    11:00-19:00にする、など他の人たちとずらす)
  • 人と隣り合って座ることを避ける
    (周りの人と1.5m以上の距離を保つ)
  • ホームで待つときも出来る限りスペースの
    あるところを探して立つ
  • マスクなしで喋らない
  • 他のところを触った手で口元を触らない

 

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ホームで待つときも人と離れて!

*買い物に行く時の注意点

スーパーのレジに密集して並んでいたらそこで感染のリスクがあります。マスクを買いに薬局に並ぶ、家に籠るためにDVD借りに並ぶ、なんてやってることめちゃめちゃ。本末転倒です。何のための外出自粛なのかをよく考えましょう。気分転換に家族みんなでスーパーに行くのも避けましょう。やはり人は多いですし、他人ばかりの空間。多くの人が触るカートやカゴなどもすでに汚染している可能性があります。
とりあえず人混みに行く、列に並ぶと言う状況は徹底的に避けましょう

  • レジに並ぶ時には、1.5m-2mの距離をあけて待つ
  • 他の人がいる棚には近づかない
  • 店の中に人がたくさんいる場合は外で待ち、
    空いてから入る
  • 出来るだけクレジットカードのタッチ決済や
    おサイフケータイを使用(コンタクト・サイン-レス)
    (現金を使用する場合は、使用後手洗いを)
  • 帰宅したらまず第一に念入りな手洗い・うがい
  • 家族皆ではなく、買い物に行くのは代表して1人にする
  • 荷物が増える場合は、もう一人が車で待つなど
  • 最低でも2-3日分まとめて、単身なら1週間分くらい
    まとめて、買い物に行く回数を自体を減らす
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並ぶ時には1.5m-2mの間隔を開けて。レジ前に2mごとの赤い印。

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店の中に人が多い場合は、外で2mの間隔を開けて並んで待ちましょう。海外の多くの店では入店人数制限を設けています。

*完全なコンタクトレス!!

感染が疑われて自宅待機になったドイツの方々は、「徹底的な自宅隔離を行っています。例えば、

  • 買い物は絶対に自分では行かない
  • 誰かに代わりに行ってもらい、ドアノブに品物を掛けてもらう
    (その人がいなくなってから、ドアを開けて受け取る)
  • デリバリーの受け取りも事前決裁、ドアの外に置いてもらい
    直接会わずに受け取る
    (受け取りのサインもしなくて良いシステムになりました)
    これくらいの徹底が重要!!

これくらい徹底的に人との接触を絶っています。14日間。
周りに買い物を頼むような人のいない高齢者を助けるボランティアなどもあります。

*オフィスでの過ごし方

オフィス内は閉鎖空間で多くの人が同時に存在しがちでここも非常に危ないです。ただ、働く環境によっては出勤を余儀なくされている人も多いと思います。出来る限りの工夫と対策をしましょう。

  • 換気を徹底!
    (最低でも1時間毎に10-15分換気)
  • 朝出勤したら使用前に机やパソコンのキーボード、マウスを消毒
    (消毒が手に入らなければ普通の中性洗剤の水拭き
    でもやらないよりは良い)
  • 机と机の間隔を離して配置する(向かい合わせにしない)
  • 隣り合って座らない
  • 一度にオフィスに来る出勤人数を制限する
    (時間や部屋、出勤日を分ける)
  • 会議は可能な限り全てオンラインに
    (難しければ、窓を開け、
    人と人との距離を1.5-2m最低でもあけて座る)
  • 商談など向かい合って話すときはマスクをし、距離をとる
  • カウンターで応対する場合はカウンターに透明盤などを立て
    パネル越しに話す
  • エレベーターは避ける
    (乗るのであればボタンは指ではなく肘や指の関節などで触る)
  • ドアを開けるときは手でハンドルを握らず肘などを使う
    (ノブを回すなど他の人がよく触るところを
    触った後には必ず手洗いを!)
  • 筆記用具、ファイルなど職場で使ったものはなるべく家に持ち帰らない
  • 持ち歩くものは必要最小限に

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カウンター越しの仕事(受付・レジなど)では透明パネルを使用して、飛沫を遮断

 *帰宅後自宅での過ごし方

自宅に帰ったらもちろん手洗い・うがいを徹底的に。そして可能であれば、まず洋服などを脱ぎ部屋に入る前に着替える。脱いだものはそのまま洗濯機へ。そしてよく触る携帯、カバンなどの私物を消毒する。そして、飲食など他の作業に入る前には、再度手洗いを。(私は医療関係なので、手洗いうがいに加えて、念には念を入れて帰宅後まず部屋に入る前に必ずシャワーまでしています)

また家族と同居されている場合、特におじいちゃんおばあちゃんと同居している場合や、自分に少しでも症状がある場合(風邪症状や疲れ気味なども)は、他の家族と可能な限り生活空間を分け(部屋を分ける、1階2階など)、接触する機会を避ける
ご飯やお風呂の時間をずらす。換気をする。会うときも出来る限り2m以上距離をおくなど、

もし自分が感染していたとしてうつさない努力を

 *散歩・運動に行く時の注意点

散歩運動はロックダウンした地域でも許されている国が多いです。

ただし、1人(または家族で2人)、人気のないところにいきましょう。

人が大勢集まるところに行ったり、友達と外で待ち合わせて一緒に運動するのでは人との接触が増えてしまいます。出来る限り家族以外との接触は避けましょう。どうしてもの場合はお互いの間隔を2m以上保ち、ペットボトルなどのまわし飲みなどは絶対に避けましょう。

ゆっくりと自然を満喫するのが一番です。

*医療機関の受診の仕方

医療崩壊が叫ばれる今、一番避けなければいけないのは軽症患者さんが救急外来や一般の外来に詰めかけてしまうことです。医療スタッフへの負荷を増やしてしまうばかりか、コロナかも?って心配して受診することで、病院で実際にウイルスをもらってしまう可能性すらあります。

症状がある状態で病院を回ることは自分もしんどいし、もしコロナだった場合には、周囲の命さえも危険に晒します。まずはぐっと我慢して自宅にとどまりましょう。そしてやっぱりしんどい時には、「電話で」近くの開業医や各自治体のコロナ対応コールセンターに事前に連絡して指示をあおぎましょう。間違っても直接病院を受診して、他の人と一緒に待合室で待ったりしてはいけません。

検査してもらわないと”不安”な気持ちはわかります。けどコロナウイルスとわかったとして、軽症患者に対して出来る治療はないのです。

病院を回って体力を消耗するより、自宅でしっかり水分と栄養をとって、十分な睡眠をとって、しっかり休養することで、自分の免疫で早くウイルスをやっつけましょう!

ただし、重症化のサインや他の隠れた病気を見逃さない必要もあります。どんな時には受診すべきなのか、受診する時には何に気をつければいいのか、また別のブログでまとめようと思います。

 *今できる最善の策を。人との接触を可能な限り全て避ける。

医療や介護の現場の方々、コンビニやスーパー・テイクアウトのお店など人々のライフラインを担ってくれている方々、公共交通機関を動かしてくれている方々、保健所や警察の方々、郵便やデリバリーを担ってくれている方々、リスクを背負いながらも働き続けてくれている全ての方々に感謝しつつ、今一度どうやったら人との接触を最低限に減らせるか、今の置かれた環境で自分が感染しないために何が出来るか、家族を危険にさらさないために、何をまだ工夫できるか。今できる最善の道を知恵を振り絞って考え、出来ることを皆でしていきましょう!