ドイツの医療現場から

ドイツ在住の医師として、欧州や日本の今置かれている状況を、日本の皆さんにわかりやすく情報をお伝えすることを目的としています。遠く離れていても自分にできることを。

緊急事態宣言が解除されたら生活はどうなる?ー外出制限緩和が始まったドイツより

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染爆発を防ぐために緊急事態宣言が発令されてから早約1ヶ月。日本ではこれといって罰金などないものの患者の増加がある程度抑え込めているのは皆さんの思いやりの心、そして協力と努力の賜物だと思います。

一方で、こんな外出自粛いつまで続くんだろう…と途方に暮れている人も多いと思います。それは私にもわかりません。しかし、少なくともすっかり生活が元どおりになるには長期戦を覚悟しなければならないことは確かです。

そんなことを言っても一生家に閉じこもったままではいられないので、少しずつ生活を元に戻していく必要があります。しかし緊急事態宣言か解除されたからといってぬか喜びして、みんなが一斉に外に出たならば、感染爆発が1ヶ月遅れになったというだけで、結局今までの努力が全くなんの意味もなくなります

重要なのは、
医療機関がパンクしない患者さんの人数を保ち続けることです。 

実際ヨーロッパでは  
外出制限の「段階的」緩和  
が始まりました。

 

今日は、今後外出制限が緩和されていくと、生活がどんな風になっていくのか、
ドイツの例を紹介したいと思います。

 

  

*誰と会っていいの?

外出は緩和されたものの、感染は人から人へうつるので、やはり人と会うのは最低限にする」根本は変わっていません

対人距離は1.5-2mを保つ、これは絶対です。

さらにドイツでは、4月27日から交通公共機関利用時やお店に入る時のマスク着用が"義務"となりました。ただ、人が集まらなければいいので、外出が緩和されたことで、街を出歩く人たちや公園などで日向ぼっこする人たちはとても増えた印象です。

*大規模イベントは当面禁止、ただし冠婚葬祭などは条件付きで可

  • 大規模イベント(お祭り、スポーツ、コンサート、フェスティバルなど)
    は少なくとも8月31日まで禁止。
  • 必要不可欠な集会は20名まで認める
    (臨終への立会い、葬儀、結婚式など)
  • 屋外の20名までのイベントは申請に基づき認められる場合もある
     

*どんなお店が開くの?- まずは小さなお店から

ドイツではまず小さなお店から、入場人数制限を設けて再開されました。カフェやレストラン、ショッピングモールなどはまだです。具体的には、

  • 売り場面積が800m2以下のお店はオープン可
  • ただし入場は20m2あたり最大1名まで (入場制限あり)
  • スーパーや薬局、生活用品店などは引き続き(売り場面積に関わらず)営業可
  • 美容院理髪店も営業再開

今まで生きるために必要な食料品や生活雑貨・薬局などのお店だけだったのが、加えて、本屋・ホームセンター・眼鏡/補聴器店・ペット用品店・園芸用品店・コインランドリー・クリーニングなど、生活を便利にするお店もオープンしました。

*学校や文化活動も再開!

4月27日より、学校や一部の文化施設 (博物館、美術館、ギャラリー、動植物園) などが、感染対策をしっかりすることを前提に再開されました。例えばベルリンでは動物園や植物園の屋外部分がオープンしました。

学校に関しては4月27日より段階的に再開しています。

  • 学校は段階的に再開
    (注*まずは最終学年から再開、他は段階的に)
  • 教習所や芸術学校などはまだ休校のまま
  • 試験は感染対策をすれば再開しても良い
  • 修学旅行は禁止
  • 大学の図書館などは、貸し出しのみOK
  • 子供用の遊び場再開

注* 学校の取り扱いに関しては州により異なりますが、まずは最終学年(受験などを控えた学年)の授業からまず再開し、その後段階的に他の学年を再開するという対応をとっているところが多いようです。

しかもさすがドイツ、再開を目指す中小企業の文化施設に対して1000万ユーロの予算が確保されたとのことです。(やっぱりこうゆうところ手厚い、、、)

*スポーツはできるの? -できるけど、 施設・器具の使用や人とのコンタクトは避けて

  • スポーツ施設、ジム、プール、フィットネス、サウナなどは
    引き続き禁止
  • 屋外スポーツ施設の利用は1人または家族とのみ可。家族以外なら友達1名まで。
  • 1.5m以上の距離が保てないコンタクトスポーツはダメ
  • スポーツ施設のトレーニング器具や、
    更衣室やシャワーなどの利用はできない

*この変化を受けて医療現場は?

感染者数の増加が落ち着き始めたので、医療現場はこれまで完全に中止されていた

待機手術が徐々に再開され始めました。

ただ、入院してくるコロナ患者の数はあまり減っていると言う印象はなく、むしろ今まで減っていた通常業務がまた増え始めたので、コロナ患者の対応と通常業務が重なり、私の周りではむしろより忙しくなっている実感があります。

しかし、コロナ患者の受け入れ体制には余裕を保てるよう、必ず空きベッドは確保されているように調整されていますが、一度入院した患者さんはなかなか退院できないので、やりくりはだんだん大変になってきました。

また外出制限を行ったことで、街中で感染する患者さんの数は減り始めましたが、代わりに高齢者施設や医療機関での感染拡大が進み問題となっています。他疾患で受診の患者でも疑わしい人はすぐに隔離、医療従事者が検査を受けられやすくする、高齢者施設から/-への転院の際は必ず検査を行うなど、できる限りの対策を講じて対応しています。

*今後の生活はどうなるか

ドイツだけでなく、イタリアやフランス、イギリスなども含めヨーロッパの国々では、厳しい外出制限の効果があってか少しずつ感染患者数は落ち着き始めました。

今後は次なる

生活を「段階的に」元に戻していく

フェーズに入っていきます。ただ、一気に元に戻してはまた感染が一気に広がるだけなので、様子を見ながら徐々に行っていくというのが非常に大事です。

そして、何が一番感染を広げないために大事なのかの「基本のき」を頭の中にしっかり留めておくことが大切です。

  • 丁寧かつこまめな手洗いうがい
  • 人との物理的距離を保つ
  • 3密は絶対に避ける

外出制限が緩和されて、公園で距離を保ちながら日向ぼっこしたり、親に手を引かれて外を散歩する子供達のはしゃぎ声などほのぼのとした光景が増えました。少しずつ、明るい将来が見え始めることで、皆の気持ちが少しでも明るくなっていくといいなと思っています。

 

 

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社会的距離の取り方 - やむをえず出勤しなければならない人たちへ

緊急事態宣言が出された今も、仕事が休ませてもらえない、ホームオフィスにできない、それでは経営が成り立たない。そんな悲痛な声が各地で聞こえます。外出してはいけないとわかってはいるけれど、上司の理解が得られない、いきなりホームオフィスにするなんて無理、稼げなくなったらまず自分が生きていけない…。

でも皆さん、まずはいまいちど、その仕事・外出、
本当に「命に代えても」必要なのか
よくよく考えましょう。
全国の感染症ベッドは既に埋まりつつあります。
感染者を増やさないことが、
なによりもなによりも 大切
です。

医療の立場から言わせてもらうと、まずは命あってのお金で、命あっての仕事、だとは思いますが、でもそれでもコロナショックで倒産した、家賃が払えない、お客が減って仕事が成り立たない、生活がかかっている方々の悲痛な思いは痛いほどわかります。

そんな人がどうしたらいいのか、医療職の人が意識していること、海外の人たちが実際にしていることなどを中心に出来る工夫ををまとめました。

 

 

*まずもう一度考え直してください。その外出必要ですか?

残念ながら医療崩壊は既に始まりました。現場の医師からは、1週間以上家に帰っていない、発熱患者のたらい回しが起こっている、外来がパンクしている、それなのに重症化する患者さんたちはどんどん増えている、といったこちらも悲痛な声が聞かれています。マスクなどの絶対に必要な物資も足りません。このままでは絶対必要な方々に対する医療を継続することすら難しくなってしまいます。

まずは徹底した外出自粛。
今の日本のやり方は正直甘い。

今の状態ではおそらく感染拡大を食い止めるのは難しいと思われます。

命をかけて戦場にいかなければならないとわかっていて、それでも外出しなければならない人たちへ。

諦める前に今できる最善の方法をとりましょう。感染のリスクを下げるためにできる限りのことをしましょう。そして少なくとも自分と、自分の大切な人たちだけでも守れるようにしましょう。

経済との妥協の中で、出来る最善の選択肢を。

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電車の中での距離の取り方。向かい合わない、距離を置く、話さない。

*公共交通機関の使い方

公共の交通機関は「3蜜」がフルで揃う最高に危ない環境です。まず、20-30分で着けるなら乗ることを避けて歩きましょう(むしろより健康的!?)。どうしても乗らなければならない人は、以下のことを意識してみましょう。

  • 人が多い時間帯に乗るのを避ける
     (例:普段より1時間早く/遅く出かける、
    勤務時間を7:30-15:30にする、
    11:00-19:00にする、など他の人たちとずらす)
  • 人と隣り合って座ることを避ける
    (周りの人と1.5m以上の距離を保つ)
  • ホームで待つときも出来る限りスペースの
    あるところを探して立つ
  • マスクなしで喋らない
  • 他のところを触った手で口元を触らない

 

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ホームで待つときも人と離れて!

*買い物に行く時の注意点

スーパーのレジに密集して並んでいたらそこで感染のリスクがあります。マスクを買いに薬局に並ぶ、家に籠るためにDVD借りに並ぶ、なんてやってることめちゃめちゃ。本末転倒です。何のための外出自粛なのかをよく考えましょう。気分転換に家族みんなでスーパーに行くのも避けましょう。やはり人は多いですし、他人ばかりの空間。多くの人が触るカートやカゴなどもすでに汚染している可能性があります。
とりあえず人混みに行く、列に並ぶと言う状況は徹底的に避けましょう

  • レジに並ぶ時には、1.5m-2mの距離をあけて待つ
  • 他の人がいる棚には近づかない
  • 店の中に人がたくさんいる場合は外で待ち、
    空いてから入る
  • 出来るだけクレジットカードのタッチ決済や
    おサイフケータイを使用(コンタクト・サイン-レス)
    (現金を使用する場合は、使用後手洗いを)
  • 帰宅したらまず第一に念入りな手洗い・うがい
  • 家族皆ではなく、買い物に行くのは代表して1人にする
  • 荷物が増える場合は、もう一人が車で待つなど
  • 最低でも2-3日分まとめて、単身なら1週間分くらい
    まとめて、買い物に行く回数を自体を減らす
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並ぶ時には1.5m-2mの間隔を開けて。レジ前に2mごとの赤い印。

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店の中に人が多い場合は、外で2mの間隔を開けて並んで待ちましょう。海外の多くの店では入店人数制限を設けています。

*完全なコンタクトレス!!

感染が疑われて自宅待機になったドイツの方々は、「徹底的な自宅隔離を行っています。例えば、

  • 買い物は絶対に自分では行かない
  • 誰かに代わりに行ってもらい、ドアノブに品物を掛けてもらう
    (その人がいなくなってから、ドアを開けて受け取る)
  • デリバリーの受け取りも事前決裁、ドアの外に置いてもらい
    直接会わずに受け取る
    (受け取りのサインもしなくて良いシステムになりました)
    これくらいの徹底が重要!!

これくらい徹底的に人との接触を絶っています。14日間。
周りに買い物を頼むような人のいない高齢者を助けるボランティアなどもあります。

*オフィスでの過ごし方

オフィス内は閉鎖空間で多くの人が同時に存在しがちでここも非常に危ないです。ただ、働く環境によっては出勤を余儀なくされている人も多いと思います。出来る限りの工夫と対策をしましょう。

  • 換気を徹底!
    (最低でも1時間毎に10-15分換気)
  • 朝出勤したら使用前に机やパソコンのキーボード、マウスを消毒
    (消毒が手に入らなければ普通の中性洗剤の水拭き
    でもやらないよりは良い)
  • 机と机の間隔を離して配置する(向かい合わせにしない)
  • 隣り合って座らない
  • 一度にオフィスに来る出勤人数を制限する
    (時間や部屋、出勤日を分ける)
  • 会議は可能な限り全てオンラインに
    (難しければ、窓を開け、
    人と人との距離を1.5-2m最低でもあけて座る)
  • 商談など向かい合って話すときはマスクをし、距離をとる
  • カウンターで応対する場合はカウンターに透明盤などを立て
    パネル越しに話す
  • エレベーターは避ける
    (乗るのであればボタンは指ではなく肘や指の関節などで触る)
  • ドアを開けるときは手でハンドルを握らず肘などを使う
    (ノブを回すなど他の人がよく触るところを
    触った後には必ず手洗いを!)
  • 筆記用具、ファイルなど職場で使ったものはなるべく家に持ち帰らない
  • 持ち歩くものは必要最小限に

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カウンター越しの仕事(受付・レジなど)では透明パネルを使用して、飛沫を遮断

 *帰宅後自宅での過ごし方

自宅に帰ったらもちろん手洗い・うがいを徹底的に。そして可能であれば、まず洋服などを脱ぎ部屋に入る前に着替える。脱いだものはそのまま洗濯機へ。そしてよく触る携帯、カバンなどの私物を消毒する。そして、飲食など他の作業に入る前には、再度手洗いを。(私は医療関係なので、手洗いうがいに加えて、念には念を入れて帰宅後まず部屋に入る前に必ずシャワーまでしています)

また家族と同居されている場合、特におじいちゃんおばあちゃんと同居している場合や、自分に少しでも症状がある場合(風邪症状や疲れ気味なども)は、他の家族と可能な限り生活空間を分け(部屋を分ける、1階2階など)、接触する機会を避ける
ご飯やお風呂の時間をずらす。換気をする。会うときも出来る限り2m以上距離をおくなど、

もし自分が感染していたとしてうつさない努力を

 *散歩・運動に行く時の注意点

散歩運動はロックダウンした地域でも許されている国が多いです。

ただし、1人(または家族で2人)、人気のないところにいきましょう。

人が大勢集まるところに行ったり、友達と外で待ち合わせて一緒に運動するのでは人との接触が増えてしまいます。出来る限り家族以外との接触は避けましょう。どうしてもの場合はお互いの間隔を2m以上保ち、ペットボトルなどのまわし飲みなどは絶対に避けましょう。

ゆっくりと自然を満喫するのが一番です。

*医療機関の受診の仕方

医療崩壊が叫ばれる今、一番避けなければいけないのは軽症患者さんが救急外来や一般の外来に詰めかけてしまうことです。医療スタッフへの負荷を増やしてしまうばかりか、コロナかも?って心配して受診することで、病院で実際にウイルスをもらってしまう可能性すらあります。

症状がある状態で病院を回ることは自分もしんどいし、もしコロナだった場合には、周囲の命さえも危険に晒します。まずはぐっと我慢して自宅にとどまりましょう。そしてやっぱりしんどい時には、「電話で」近くの開業医や各自治体のコロナ対応コールセンターに事前に連絡して指示をあおぎましょう。間違っても直接病院を受診して、他の人と一緒に待合室で待ったりしてはいけません。

検査してもらわないと”不安”な気持ちはわかります。けどコロナウイルスとわかったとして、軽症患者に対して出来る治療はないのです。

病院を回って体力を消耗するより、自宅でしっかり水分と栄養をとって、十分な睡眠をとって、しっかり休養することで、自分の免疫で早くウイルスをやっつけましょう!

ただし、重症化のサインや他の隠れた病気を見逃さない必要もあります。どんな時には受診すべきなのか、受診する時には何に気をつければいいのか、また別のブログでまとめようと思います。

 *今できる最善の策を。人との接触を可能な限り全て避ける。

医療や介護の現場の方々、コンビニやスーパー・テイクアウトのお店など人々のライフラインを担ってくれている方々、公共交通機関を動かしてくれている方々、保健所や警察の方々、郵便やデリバリーを担ってくれている方々、リスクを背負いながらも働き続けてくれている全ての方々に感謝しつつ、今一度どうやったら人との接触を最低限に減らせるか、今の置かれた環境で自分が感染しないために何が出来るか、家族を危険にさらさないために、何をまだ工夫できるか。今できる最善の道を知恵を振り絞って考え、出来ることを皆でしていきましょう!

 

ドイツでなぜ「患者数が多い割に医療崩壊に至っていないのか」「死亡者数が少ないのか」

ドイツでなぜ「患者数が多い割に医療崩壊に至っていないのか」「死亡者数が少ないのか」について、テレビで取り上げていただきました。番組内時計9:10〜9:34の部分です。ドイツのコロナ対策から学べることとは?

 

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*ドイツの徹底した外出制限、そして外出時の対人距離の確保

ドイツの人々の感染拡大に対する危機感と、徹底した感染対策これは日本も本当に見習うべきだと思います。例えば、これでもかってくらい徹底された対人距離1.5mの確保。スーパーや店のレジでは赤い線が引かれ、店に入るのも人数制限があり、あふれた人は店の外でこれまた1.5mの間隔をあけて並びます。それに加えて、徹底した外出自粛。普段は賑わう街中も今は空っぽです。

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レジの前には1.5m-2mあけて赤い印がついており、間隔をあけて!と書かれている。これを目印に人々がレジの列に並ぶ。

*感染が疑わしい人と、感染すると重症化するハイリスクな人の接触を徹底的に避ける

ドイツでは圧倒的にPCR検査数が多く、その結果検査陽性となった人たちのうち、若者が多くを占めています。実に15-59歳までの陽性者が全体の71%を占めます。このことは分母を増加させ、一見死亡率が低くなっているように感じさせますが、そのことは物事の根本ではありません。

重要なのは、

検査で陽性になった若者がしっかりと自宅隔離をし、
感染を広める機会を絶っていること

そして、

早い段階から待機手術や定期通院が延期となっており、中年〜高齢の方もしっかりと外出自粛をしていること

です。このことにより、感染は広がり患者数は増えているものの、重症化しやすい層の方々に感染が広がることを防ぐことができており、結果死亡する人も少なくて済んでいるのです。結局重要なのは、外出制限を皆がすべての年齢層が徹底的に守っている、ということなのです。

*検査の有無に関わらず、自分が感染していたと仮定して人にうつさない努力を

検査数に関して私が言ったコメントはややななめ解釈されて番組内では使用されてしまっている気もしますが、「要するに、検査をたくさんすればいいわけではなく」て、ドイツでは結果的に多くの人が「検査で陽性になったこと」「外出しないという強い抑止力に繋がったこと」が功を奏したわけです。

検査で一度陽性と出てしまえば、否応なく自宅隔離しなければならないわけで、その人とコンタクトがあった人も含めて「全員」、つまり家族も職場の人も皆14日間の自宅隔離です。疑わしき人は徹底的に隔離されています。

結局ドイツでは検査で陽性でも軽症なら自宅待機なので、
検査してもしなくても取られる措置は変わりません。

だから日本でもいっぱい検査をしたほうがいいというわけではなく、検査するしないに関わらず、全ての人が、自分が陽性であったとしても他の人に迷惑をかけないように、他の人にうつしてしまわないように、外出自粛の行動をとるべき!ということなんです。

*病院に患者が押しかけない仕組み

ドイツで検査が多いのが良いことかのように一見報道されてしまっているので、訂正しますが、番組のコメンテーターの方もおっしゃってくださっていますが、ドイツの医療キャパシティーがあってこそ成し遂げられたことであり、今の日本において

人々が検査を求めて病院に殺到してしまったのでは、そこで感染の可能性の高い人と濃厚に接触してしまうことになり感染のリスクがさらに高まるばかりか、医療現場のキャパシティーを圧迫してしまい、逆効果です。

見習うべきところは、そのあと。検査をしに病院に押しかけるのではなく、自分がどういう行動を取るべきかということです。ドイツでは、自分がコロナウイルスに感染したかも!?と思った時に、どこに連絡して、どう対処したらいいかがしっかりと統一されて一般の方々に明示されています。まず、かかりつけ医の先生に電話で相談する、ないしは116117というコールセンターに連絡すると決まっています。

ポイントはいずれも電話であるということです。

病院の待合室で人々がごった返している状況は、いつどこでどのようにウイルスをもらってもおかしくない状態です。ドイツの医療制度ではまず、できる限り電話にて応対するように人々に呼びかけたことで、症状がある人が病院に直接来てしまうことを防いでいます。このことが医療機関での感染拡大を防ぐことにつながっています。

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ドイツの病院では待合室も閑散としています。病院でも3密の状況は絶対に避けるべきなのです。

 

*臨戦態勢で準備を急ピッチで進めるドイツの医療現場

加えてドイツの医療機関では、感染を疑う患者とそれ以外の患者が、病院という場所で濃厚接触しないように、病院の入り口を分ける、専用病棟をもうける、患者の動線を分けるなどの工夫が徹底的になされています。また、待機手術を3月上旬から減らすことで病床に余裕を持たせ、いつ患者が増えても受け入れられる万全な態勢を整えています。これらの医療機関の対策はまた別のブログ記事で詳しく紹介しようと思います。

 

*なぜドイツでは患者数が多い割に医療崩壊に至っていないのか(まとめ)

要するに、感染している人の割合が多い若い人たちが徹底的に外出自粛を行った + 緊急性のない通院/入院は全て延期になっている(=中年〜高齢の方も出歩かない)ことの両側面で、より重症化しやすい層の人たちへの感染拡大が抑制されていることが、一気に入院患者や集中医療を必要とする患者が増えることを防いでおり、結果医療機関のキャパシティーを残していることにつながっているのです。

そして医療のキャパシティー自体も、待機手術等を減らすことで通常業務を減らし、いつなんどき患者が増えても対応できるように万全の準備がここ2−3週間の間に急ピッチで進められました。

*私たちにできること

ドイツの感染者の例からわかることは、日本では検査数が少ないので顕在化していないだけで、実は若者も知らず知らずのうちに多く感染している可能性があるということです。これが各国で、外出自粛が叫ばれている理由です。

高齢化社会の日本。もし感染が広く高齢者に広がったら間違いなく重症化する人も増え、医療機関への受診者や入院患者は増え、医療崩壊に至ります。

 

私たちにできること、
それは結局外出自粛して感染を広げないようにすること。
そしてどうしても外出せざるをえない時も対人距離を1.5-2m以上保つ
他人と接触する機会を極限にまで減らす
さらに、基本のき「手洗いうがい」などの感染予防。


それも今の日本のようにやったりやらなかったり、やる人がいたりやらない人がいたりの中途半端ではなく、ドイツを見習って徹底的に行うこと、
これが一番重要なことです!

 

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医療機関での感染が明暗を分ける!?ドイツの病院の感染対策から学べること

いよいよ東京を中心に医療現場ではコロナウイルスの感染患者増加に伴い病床が飽和し始め、通常医療に支障が出てきたと悲鳴をあげる声が徐々に上がってきました。今後感染拡大が予想される中、ドイツでは感染者数が、8万5千人もいるにも関わらず、死亡率は1.3%と低く留まっていることが、今着目されています。

 

ドイツが他の国と比べ死亡率が低い理由はなぜなのか」

 

私はその理由として次の3つのことを考えます。①感染患者の年齢層が若い、②高齢者の感染機会が少ない、③早期からの入念な準備と豊富な集中医療の受け入れ体制です。中でも、特にドイツでは徹底的に医療機関での感染を予防していることと医療崩壊を防ぐために早期から急ピッチで準備を進めており、万全の受け入れ態勢で臨んでいることが、イタリアのような医療崩壊に至るのを防ぎ、非常に功を奏していると考えています。

これ以上感染を広げないために、そして、犠牲者を増やさないために、ドイツの医療現場から学べることは何なのか、また一般の方が医療機関を受診するときに何に気をつけたらいいのか。それをお伝えしていきます。

 

 

*ドイツでなぜ死亡率が低いのか

*感染患者の多くは若年層

ドイツで検査陽性と報告された人のうちの多くは比較的若い年齢層が占めています。感染者を年齢別でみると、15-59歳が71%、60-79歳が19%、80歳以上の6.9%と、イタリアやスペインなどに比べ、比較的若い人に感染者が多く、重症化する人の割合が少ないことが、死亡率の低い一つの理由であると考えられます。

では、なぜ若者のあいだでは感染が広まったのに、重症化するリスクが高いと言われる高齢者に広がるのを避けることができているのでしょう?

*早期から徹底的に高齢者と若者の接触を避けている

その理由は、感染者数がまだ2-3千人の頃から徹底的な一般市民による外出自粛が行われており、日常生活において若者と高齢者が接する機会が激減していること。そして医療機関においても3月上旬の段階から待機手術は全て延期となり、普段のかかりつけ医への受診もまずは電話で相談することが推奨され、緊急性のない受診は極力しないようにすることで、早期から中年〜高齢者が感染するリスクの高い「病院」という場所に行く機会や「街中」を出歩く機会が限定されていることにあると思われます。

これが感染者の増加が若者の間にとどまり、入院が必要な重症患者が増えるのを抑えていることにつながっていると考えられます。

つまり、ポイントの1つ目はまず60歳以上の中年〜高齢者が、ウイルスに感染する機会が早期から徹底された外出自粛により減っているということです。

 

2つ目ポイントは...

*早期からの入念な準備と周到な受け入れ体制

各医療機関が急ピッチで患者の受け入れ準備を進めて
臨戦態勢で事態に臨んでいる。だから余裕があり、
医療崩壊せずに十分な医療を提供することができている、

ということです。

ではドイツでは実際にどんな準備や対策が行われているのでしょう。

 

1. 徹底した対人距離1.5mの確保 

まずは病院の受付を見てみましょう。受付前の床には1.5m間隔の赤い線が引かれており、人々が受付に対人間隔を保って並んで待っています。病院の入り口には職員が立っており、患者・職員・搬入等の方など含め、全ての人が体温チェックを受けます。その後手指消毒をしてから院内に入ります。

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ストップサインで止まり体温測定。受付前には1.5mごとの赤いラインが引かれておりそれに沿って並ぶ。受付には飛沫が直接かかるのを防ぐためのための透明な防護パネル。

院内に入った後は、待合室で待ちますが、そこでも対人距離を意識します。隣の人とは最低でも1.5m以上の間隔を空けて座ります。隣り合う椅子には張り紙がされてあり、座れないように工夫されています。待合室に人が多くなり対人距離を十分に取れないときには、患者さんはなんと屋外で呼ばれるまで待ちます。それだけ、対人距離1.5m以上は徹底されています。ですので、待合室はいつもガラガラ。数人しかいません。

 

2. 患者さんどうしが交わらない動線

その後診察を受けるときも、検査を受けるときも患者さんと関わる医療者はごく少数。できる限り接触を少なくします。発熱や呼吸器症状を訴えて救急にきた患者さんと、一般の持病の治療のために受診する患者さんは、「そもそも入り口すら別々」に設けられており、院内での動線や検査もきっちりと分かれており、感染が疑われる患者さんとそうでない患者さんが交わらないように厳密にコントロールされています。コロナウイルスの感染が疑われる患者は、「コロナ専用病棟」に送られてそこで隔離されます。検査や診察も全てそこで受けます。

3. 緊急性のない受診や入院は延期!

ドイツではかかりつけを受診する患者さんも、特に体調に変わりなければ屋外で処方箋だけをもらって、院内にすら入らず帰宅します。受診を避け、電話での状態の確認なども行います。

入院に関しても緊急性のない予定手術の患者さんなどは、全て延期となっています。

どうしても入院が必要な場合でも、待機手術を減らして空けた部屋を利用して、普段3人部屋を2人で利用したり、2人部屋を1人で利用したり、入院患者同士の接触も極力回避します。院内での人の出入りを減らすため、もちろんお見舞い、付き添い、全て禁止です。

患者さん同士の接触を避けることで、
院内での感染が起こりうる可能性を徹底的に排除する。

そして、通常業務を緊急性のあるものだけに絞って落とすことで、ドイツの病院はこの感染拡大に対応するスペースとマンパワーの余裕を生み出しているのです。 

これが医療崩壊を防ぐことにつながっています。

*閑散とした病院!?

実際に、感染者が8万5千人になった今、病院は忙しくなっているのか?医療崩壊間近なのか?と思われるかもしれませんが、実際は全く逆で、むしろ病院は閑散としており、いつもよりも余裕がある状態です。

普段は患者さんで溢れている病院の待合室にも、3-6人程度がポツリポツリと座っているだけ。入院の病棟もガラ空きです。

その背景には、既に3月上旬から全ての待機手術や必要不可欠でない定期受診は延期するよう国から通達が出ていることが挙げられます。ドイツの病院では、感染爆発に備え病棟を空けて、臨戦態勢で受け入れの準備をしているのです。

*実は危険な病院の待合室、改善策は?

では日本はどうでしょう。軽症の方々が受診を自粛することにより、普段より多少受診患者数は少なくなっていると聞きますが、それでもいまだに病院の待合室は診察を待つ人で溢れています。ドイツの待合室はガラガラに空いています。

病院は閑散としている、ここが日本とドイツの一番の違いです。

今までなんどもお伝えしていますが、このウイルスの怖いところは、症状がない・または軽い段階でもウイルスに知らぬうちに感染しており、他の人にうつしてしまう可能性があることです。コロナウイルスがいつもわかりやすい症状で顔を出してくれれば良いのですが、時にはお腹の症状やちょっとしただるさなど、わかりにくく潜んでいる場合もあります。そうした人たちはコロナウイルス専門外来ではなく普通の病院に受診してしまうことになります。そういった人がいつどこに紛れてるかわからないわけですから、自分は定期通院のつもりで待合室で待っているつもりでも、病院で過ごしている間、いつ誰から感染をもらってしまうかもわかりません。

しかし、病院内で患者や医療スタッフが感染して、病院がクラスター(集団感染の元)になってしまったら元も子もありません

ドイツの病院で行われている、徹底的な対人距離1.5mの確保、人混みを避ける対処、そして感染を疑われる人とその他の人が交わる機会を徹底的に避ける対応は、感染症受け入れ対策病院だけで対応するのが難しくなってきた今、開業医や一般の医療機関も含み全ての医療機関受診において今後日本にも必要とされてくると思います。

 

 

*患者さんとして受診する際に気をつけるべきことはなんでしょう?

*軽症の場合や定期受診はできるだけ医療機関の受診を避けよう

日本人たるもの、お医者さんに診てもらっていたら安心。そう思っていただけているのは有難いことですし、我々医療者もその期待に応えたいと毎日必死に頑張っています。

でも今は非常事態なのです。

感染が広まり始めた今となっては、もはや誰が感染しているかわからない、外を出歩きたくさんの人と接することでいつどこで感染をもらってきてもおかしくない状態なのです。そして、残念ながら病院は症状のある人の集まる、一番危険な場所なのです。

 ・緊急性のない受診は避ける
 ・どうしても受診するときは待合室での人混みを避ける
 ・コロナウイルスの感染を疑う場合は事前に電話で相談して直接の受診を避ける

定期受診をしている方は、少し長めに薬を出してもらえないか主治医の先生に相談してみましょう。また高齢の方が待合室などで長時間他人と共存して待つような事態は絶対に避け、家族の方に薬を取りに行ってもらったり、待合室で待つ場合も他の人との距離を1.5m以上あけることを意識しましょう。

*医療機関での感染拡大を防ぐ!コロナを疑うときはまず電話連絡を!

そして、何よりも重要なのは、自分がコロナウイルスかもしれない。もしくは他の症状や持病で通院したいけれど、咳などの症状もありコロナウイルス感染の合併などが疑われる場合。その場合は、できる限り直接の受診は避け、まずはかかりつけやホットラインでの電話で受診について相談しましょう。医師や担当者からどのように対処すべきか教えてもらえると思います。

 

感染が疑われる人がいつもと同じように受診をして他の患者さんたちや医療従事者と接することで、院内全体に感染が広がることは何としても防がなくてはなりません。

 

医療機関での感染を防ぐことは、医療崩壊を防ぐことに非常に重要です。
みなさんへもう一度お願いです。

 ・緊急性のない受診は避ける
 ・どうしても受診するときは待合室での人混みを避ける
 ・対人距離を1.5m必ず確保する
 ・コロナウイルスの感染を疑う場合は、直接受診する前に事前に電話で相談

 

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閑散とした待合室

 

オーバーシュート(感染者の爆発増加)の足音 - 日本人は危機感がなさすぎる!?

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界中での急速な感染拡大に伴い、既に医療崩壊に至ったイタリアやスペイン、アメリカなどを中心に爆発的に犠牲者が増えており、連日2500〜3000人以上の方が世界中で亡くなっています。昨日1日だけでイタリアではなんと971名もの方が命を落としています。

遠い海の向こうの世界の話だと思っていませんか?
日本は医療が進んでいるから医療崩壊はしないと思っていませんか?

残念ながら、今皆さんが映画のように画面を通じて見ている世界の惨状は、皆さんが現状を変えようとしなければ、数週間後の日本である可能性が十分にあると思います。(個人的には、まだ街中で集う若者や、他人事ととして捉えている人たちが多い今のままの状態が続けば、医療崩壊に至る感染拡大はほぼ確実に避けられない未来だと思っています。)

 

連日のメディアでは、”オーバーシュート”が起こると"医療崩壊は避けられない"。そうなってしまうと、普段なら助けられる命も助けられなくなる。と報道されています。

オーバーシュートってなんのことなのか?なんでそれが起こると医療崩壊になるのか?どうして日本の先進医療をもってしても患者を救えなくなるのか。
これをわかりやすく解説します。

 

 

*オーバーシュート(感染者の爆発的増加)って何?

3月26日辺りから国内で連日100名もの新規確定患者が報告されはじめています。

2週間前のアメリカはどうだったでしょう。WHOの報告をみると3月16日頃までは200-300人程度の新規陽性確定者数だったのが、その2-3日後には3000人、1週間後には10000人の患者が出ています。最新の29日の報告では約2万人の陽性報告があり、1日で425名もの方が亡くなっています。このような状態が急速な感染者の増加=オーバーシュートです。

その間、たったの2週間なんです。

今、国内で連日100名の新規患者さんが出ています。最新の29日の報告では既に、194名です。2週間後にどんな状態が予測されるかこれでわかりますね?医療者の皆がどんなにその事態を恐れているか想像できますね?

私たちはこのような事態になるのを絶対に避けなければいけません。

むしろ患者さんが増えている以上、必ずさらなる感染増加は起こります。でも、なんとしてでも医療機関が対応できるレベルに抑えなければなりません。

でもそれをできるのは私たち医療者ではなく、一般のみなさんの一人一人の行動なのです。とにかく不要な外出をしない!人と集まらない!

*オーバーシュートはどうして起こるのか

実際に東京で感染した方の報告をみると10代〜70代まで幅広い年代層に及びます。もちろん空港で検査されて検疫で陽性となる方もいらっしゃいますが、数としては限られていて、ほとんどは街中で感染した人たちです。

ということは、仕事に行き、友達と食事し、帰りにコンビニに寄るなど、普段通りの生活を送るそこのあなたもウイルスの危機に直面しているのです。その中でも、散々口うるさく言われているとは思いますが、「3密空間」と言われる、

  • 換気の悪い密閉空間
  • 多数が集まる密集場所
  • 間近で会話や発声をする密接場面

で、特に感染のリスクが高いと言われています。

電車やレストランで隣の席の人との間隔は1.5m以上離れていますか?みんな大声で会話していないですか?近くに咳き込んでいる人はいないですか?人が密集する場所ではウイルスが飛沫という状態になって空中にふわふわ浮遊している状態になっています。非常に危険です。

症状があるのであれば外出しない!これ、基本中の基本です。

そして、

症状がなくても無駄に外出をしてウイルスを吸い込みにいく必要ないのではないですか?その外出どうしてもどうしても必要か、今一度考え直してください。

世界中で健康でなんの病気もなかった若者の死亡報告も徐々に出始めています。高齢者に比べると少なくはありますが、それでも誰が重症化するかなんて、誰にもわからないのです。なにせ未知のウイルスなんですから。

自分が軽症で済んだとしても、そのウイルスを他人にうつし、その人が亡くなってしまう可能性だってあるのです。関係ない人なんて誰一人いないんです。

 

*どうしてオーバーシュートが起こると医療崩壊になるのか

新型コロナウイルスは感染した人の80%は軽い風邪くらいで済みます。しかし15%は入院が必要とされる状態となり、5%は人工呼吸器などの集中治療が必要な状況となります。日本の現時点での累計患者数は1693例です。今は1000人レベルの感染だからなんとかなっているものの、5%が重症化という頻度は、とても厄介です。

なぜなら、このウイルスが1万人に感染したら500人の重症患者、10万人に感染したら1万5000人が入院して、5000人が人工呼吸器や集中治療を必要とする状態になります。

いくら日本が先進国で医療水準が高くたって、こんなにもたくさんの人を一気に救えるほど、キャパシティーは大きくありません。これが医療崩壊です。日本のICU(集中治療)設備は人口10万人あたり3-4床しかないと聞きます。感染対策のなされた病床は全国にたった2637床です。感染者が100名程度の今の段階ですら、既にほぼ半数の感染症病棟が埋まっています。500人、1000人と増えて行ったら、どうなってしまうのでしょう。

感染者が爆発的に増えれば簡単に医療は崩壊して、普段なら助けられたであろう命も助けられない、命の取捨選択が迫られるイタリアやアメリカのような惨状が日本でも本当に起こり得るのです。

 

*なぜCOVID-19はそんなに危ないのか

インフルエンザにかかったことがある人はわかると思いますが、高熱が出て、喉も痛くて、節々が痛くて全身がしんどいですね。とても無理を推して仕事に行きたいとは思えませんね。でも新型コロナウイルスは違うのです。意外にかかっても多くの人は、「ん?ちょっと風邪気味かな?」くらいで済んでしまうのです。なんなら、下痢や腹痛などのお腹の症状しかない人や、話題の味覚・嗅覚の症状など、一見コロナウイルスだとわからない顔をして近づいてくることもあります。だから意外と普段通り過ごせてしまうのです。

じゃぁ、たいしたことないじゃないか。

と思うあなたがいたとしたら、それは本当に危険な考え方です。

 

その①に、コロナウイルスは遅れて重症化してきます。はじめは風邪のような軽い症状で始まり、発症後5-7日ほどで急速に呼吸状態が悪化することがあります。実際に診療に当たる先生方は、増悪した場合、その経過はかなり急速で、先ほどまで普通に話せていた人たちが、数時間のうちに緊急で人工呼吸器が必要な状態になるとおっしゃっています。こうなると誰しも手遅れになる可能性があります。

その②に、あなたが感染を広げる原因となってしまう可能性があります。あなた自身が幸いにして軽症で済んだとしても、そのあなたが感染していた間に接触のあった方々はどうでしょう。もちろん家族や友人たち、その他にも偶然レストランや電車、イベントなどで一緒に居合わせた人たちもです。あなたが関わったその人たちがのちに発症し、命の危機に瀕するかもしれないのです。

油断している隙を狙って悪さをしてくる
そして一見わかりにくく潜んでいるから気づかぬうちに感染が広がる
これがこのウイルスの怖いところです。

皆さん、わかってください。外出自粛は自分のためだけではなく、あなたの両親・祖父母・友人・同僚、大切な多くの人たちの命を守るためであるということを。そのためには、一人一人が感染を広げるリスクを極限まで下げなければいけません。

 

*海外の同僚たちが警鐘を鳴らしています

一足先に、イタリアやスペイン、フランス、そしてアメリカの一部で医療崩壊が起きています。人工呼吸器や感染防御の物資が不足し、医療者も倒れていく自体となっています。ひとたびコロナウイルスの感染が増悪したら、治るまで週単位の治療が必要となります。ベッドが満床になって、人工呼吸器も全部使われているのに、医療スタッフも不眠不休で働いているのに、それでも次々に患者さんが運ばれてきたらどうなるでしょう。そのような場合、その場にある医療資源で全ての人を救うことが出来なくなってしまいます。トリアージといって、より助かる可能性の高い患者さんを優先し、状況の悪い患者さんは諦めざるをえなくなってしまいます。命の選択が行われることになってしまうのです。そんな事態誰が耐え得るでしょうか。

また、コロナウイルスに感染しなかったとしても、普通に持病が悪化したり、心筋梗塞や脳梗塞などの急病になったり、交通事故にあって手術が必要となったりした場合、あふれ返るコロナウイルスの患者で混乱の最中の病院に運ばれて、果たして普段通りの適切に治療が受けられるでしょうか?

 

イタリアでの感染爆発を受けて、中国だけではなかったのかと多くの国が外出自粛や国境封鎖に乗り出しました。しかし一般の人々はどうでしょう。国が外出自粛要請を出していても、フランスやニューヨークも2週間前はのほほんとしたもので、誰もそんな深刻に受け止めていなかったそうです。それが、今となって医療の現場で働く仲間たちは多くの人が病院に詰めかけ、目の前で次々に人々が亡くなっていく現場に悲鳴をあげています。こうなってから焦り始めるのでは遅いのです。

 

*今私たちにできること

これだけ世界の国々が警鐘を鳴らしているのに、
日本は行動を変えなくていいのでしょうか?このまま多くの方々の命が犠牲になるのを見殺しにしてもいいのでしょうか?まだオーバーシュートに至っていない今ならまだ引き返せる可能性があります。

感染者が増え始めた今、自粛解禁モードとなってヨーロッパやアメリカと同じ悲劇の道をたどるか、ここで踏みとどまるかの瀬戸際に私たちはいます。

私たちに今できること。それは、

  • 不要不急の外出はしない
    (外出がやむをえない時は人との距離は1.5m以上保って!)
  • 3密空間には”絶対に”行かない
  • 手洗い・うがいなどの予防を徹底的に行う

多くの方々の命を救うために、そして困難に直面しなければならない医療現場の同僚たちを救うために。皆様、どうかどうか宜しくお願いします。

 

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参考:WHO 2019nCoV infections daily update https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports/

尊敬する忽那先生のわかりやすいまとめ

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200322-00169120/

厚生労働省発表の資料(患者の数など)

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/houdou_list_202003.html

ロックダウン(都市封鎖)が起こるとどうなる?ドイツ首都ベルリンの状況から


新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が急増する兆しが出てきたことを受け、東京がロックダウン(都市封鎖)されるかもしれないという噂が徐々に真実味を帯びてきています。

しかし多くの人にとってロックダウンとか英語で言われても、何が起こるのか具体的によくわからない。東京にいたらやばいと漠然と恐怖を感じてしまっている方々も多いと思います。

私の住むドイツは、3月16日よりオーストリア、フランス、スイスなどの隣接する国に対する国境封鎖措置がとられ、首都ベルリンも3月22日よりいわゆる"ロックダウン"の状態になりました。

 

 

*ロックダウンとは?具体的にどんな制限があるの?(ベルリンの例)

具体的に何が起こっているかというと、

  • 公共の場は2名以下でしか出歩いてはならない
    (基本的に1人。ただし、家族以外の1名、または家族の同伴のみ認められる)
  • 全ての飲食店は閉鎖
  • 同居の家族以外との接触は可能な限り避ける
  • 他人との距離は最低でも1.5m、可能なら2mあける
  • イベントやグループによるパーティーは自宅・屋外に限らず禁止
  • 酒場やクラブ、スポーツジム、美術館・コンサートホール、映画館、アウトレット、レジャー施設、売春宿、美容院やマッサージ、子供の遊び場は営業禁止
  • 保育園・幼稚園・学校はベルリンでは3月17日から既に休校
    南部ドイツの方ではその1週間前から休校
つまり、他人との接触は可能な限り避け、公共の場を思うように出歩くことができなくなるということ。そしてライフラインや生活に支障のない商業店は全て閉まるということです。

 今の日本の「外出自粛」のような"要請"ではなく、ロックダウンとなった場合は、警察により監視され、違反すると具体的な"罰則"があるわけです。通勤で仕事の同僚と2人で会話しながら歩いているだけでも、パトカーで巡回する警察と目が合ったり、人々からの視線をチクチクと感じます。(罰則の内容に関しては、公には書かれていませんが、友人たちの間では、罰金250ユーロ[約3万円]などという噂が流れています。)

また渡航に関しては、3月17日からEU国民、シェンゲン協定国民とその家族、また長期滞在許可を持つ外国人居住者以外の者に対し、正当な理由のない場合入国の制限がかかるようになりました。国間の移動は仕事や人道支援等のやむ終えない事情がないとできなくなりました。

イベントや生活制限がかかって1ヶ月、渡航規制がかかって2週間、ロックダウンが開始されて1週間。普段若者でごった返しているベルリンの街も、綺麗さっぱり空っぽになっています。普段通勤ラッシュの時間帯も、電車にはまばらに人が座っているような状態です。

 

*ロックダウンでもできることは?何なら許されているの?

例えば、

  • カフェやレストランは閉まっていても、テイクアウトや宅配は可
  • スーパーや生活用品を扱う店は開いている
  • 職場への通勤、生活必需品の買い物、通院
  • 託児・高齢者介護などのケアやリハビリ
  • 高齢で動けない人などのための他者へのサポート等
  • 個人でのスポーツ、屋外の新鮮な空気を吸うための運動

ですので、朝早くランニングをしている人や、スーパーの周りにはちらほらと人を見かけます。ただスーパーの入り口やレジでは、皆1.5m以上の間隔をあけて並んでいます。

ちなみにスーパーの店頭に並ぶ品々などは、一時のパニックで棚が空になることはありますが、人々の動きを抑えるだけで、物流を抑えるわけではないので、必ず(遅くとも数日のうちに)補充されます。備蓄品の買い込みは必要最低限にしましょう。

 

*ロックダウンは効果があるの?

ドイツでは、まだ感染者が1000人程度だった3月10日前後には、渡航制限(特にイタリアなどのリスク地域)及びイベントの自粛要請が出されていました。
(今の日本と似たような状況ですね)

そしてこの頃から地域によっては幼稚園・学校の休校も始まりました。しかし、その後またたく間に感染が広がり、3月上旬ではドイツ全土で260名程度だった感染確定者も、国境封鎖などの防疫措置のとられた3月15日時点で4838名(死亡12名)、ロックダウンに至った3月22日には18610名(死亡55名)と急速に増加し、昨日3月28日時点では厳しい外出制限措置にも関わらず、48582名(死亡325名)と一気に感染者数も死亡者数も跳ね上がっています。

 

この間、たったの1-2週間でした。

 

ドイツが早めの措置に踏み切っていなかったら、今頃どうなっていたことか。さらに大変なことになってしまっていたかもしれません。ロックダウンをしなかった場合の試算のようなことは、私のような医療現場の一駒として働いている人間にはできないのでわかりませんが、少なくともイタリアやフランスなどの他国で一気に感染が広がってしまった背景には、感染拡大の兆しが出始めた当初に人々の危機感が薄く、気づいたときには既に感染が蔓延し、時遅しという状態になってしまったことが考えられます。

あ、やばい!と思った時では遅いのです。

ウイルスに感染してから発症するまでには「潜伏期間」という、ウイルスが体の中にいるけれどなんの症状もないっていう期間があって、この間に自分がウイルスに感染してるとはつゆ知らず、外を元気に歩き回ってみんなと会っているうちに、他人にウイルスを撒き散らして多くの人にうつしてしまっている可能性があるのです。特に若い人でこの傾向があります。

 

*いつまでしなければいけないの?

いつまでかかるかというのは実際の感染の広がり方にもよるので、現時点ではなんとも言えませんが、ベルリンに関して言えば、ひとまずこれらの措置は4月19日までという目処で伝わってきていますが、延長の可能性ありと記載されています。中国は8週間の強硬な隔離政策により、やっと落ち着き始める兆しを見せているかどうか、(現場の意見ではまだという話も)というところです。

日本は3月1日から学校が休校となり、本格的に外出規制モードになってから4週間。自粛モード解禁の雰囲気になって間もなく感染者が増え始めました。

感染者が増加し始めている。ここからが勝負の時です。

 

*なぜロックダウンという経済破綻するような強硬手段にでなければならないのか?

 ひとまず皆さんにご理解いただきたいのは、

無症状や軽症の人が知らず知らずのうちに、他の人にウイルスを撒き散らしてしまっている可能性があるということです。感染源が特定できない感染が増えている、とメディアで言っているのは、つまり、自分がどこでどのようにウイルスをもらってきたかわからない。つまり、この間の飲み会だったかもしれないし、職場の隣の席の人だったかもしれない、けれど周りの人たちもみんな元気だったから、いつ病気の人と関わったかわからないのに、いつの間にか感染している、という状態です。

これでは誰がウイルスを持っていて持っていないのかわかりません。症状がないかあっても軽微なので、自分でも感染してるかどうかよくわかりません。

そのような隠れた感染者が、まぁ自分はしんどくないし平気かな、と出かけて家でおじいちゃんやおばあちゃんと会ったり、バスで高齢者と隣同士に座ったり、飲み会で不特定多数の人と居酒屋で時間を共にしたり、、とする中で、人にうつしてしまい倍々ゲームのように感染者が増えていく可能性があるのです。

 

都市のロックダウンは、もう誰が感染しているかわからなくなった!そしてこからウイルスをもらってきたかわからないような感染者が続々と増えている時の、「最終手段」なのです。

誰が感染者かわからないのなら、誰とも会わなければ、ひとまず感染はしないでしょう!ということです。

 

*感染拡大を食い止めるために、一番大事なこと

 これまでに述べたロックダウンの状況を聞いて、そんな不便な生活やっていられない!!と思うのであれば、今のうちから、外出は必要最低限の、どうしても必要なものだけに絞っていれば、このような最終手段は免れるかもしれません。

要するに、街を封鎖するかしないかということではなく、私たちのような無症状な若者が街に繰り出すのをやめて、家に留まることでウイルスを撒き散らす(拡散を媒介する)のを防ぐことに効果があるのです。

その会議・飲み会、オンラインにできませんか?その仕事、ホームオフィスにはできませんか?どうしても開催したい意義のあるイベント・式典など、1ヶ月後などに延期できませんか?

 3月の日本の皆さんの必死の頑張りで、いまだ日本は感染者が1500人に止められています。感染者が増え始めた今、自粛解禁モードになってヨーロッパやアメリカと同じ悲劇への道をたどるか、ここで踏みとどまるか、今からの2-3週間の皆さんの粘りにかかっています!!どうか、不要不急の外出自粛、心がけてください。

 

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*ベルリンの観光名所ブランデンブルク門(注:写真は昨年撮影したものであり、ロックダウン中の様子を表すものではありません。なにせ出歩けないので、、、

 

参考:https://www.bundesregierung.de/breg-de/themen/coronavirus/besprechung-von-bundeskanzlerin-merkel-mit-den-regierungschefinnen-und-regierungschefs-der-laender-zum-coronavirus-1733266

https://www.rki.de/DE/Content/InfAZ/N/Neuartiges_Coronavirus/Situationsberichte/Gesamt.html

 

 

 

 

今自分にできることを。。。ブログを始めました。

 


初めまして。

ドイツ在住の循環器内科医のmakiと申します。

 

新型コロナウイルスの感染拡大が、全世界で広がっているのを受けて
遠く離れていても日本の皆様のために
何か自分にできることはないだろうかと考えた結果

今のヨーロッパの状況、日本の状況
コロナウイルスはなぜ手強いのか
多くの命を救うために私たちは今どうしたらいいのか
など、一医師の視点から、
そしてドイツにいるからこそわかることも含めて
わかりやすく皆さんにお伝えすることができればと思っています。

 

簡単な自己紹介としては、
2017年4月よりドイツベルリンに移住、
ドイツ語を一から勉強し始め
州限定・期間限定の医師免許である医師活動許可(Berufserlaubnis)を取得。
現在ドイツの病院の循環器内科にて臨床医として働いています。

 

それでは早速本題の方に、、、

 

なお、このブログで記載している内容は、あくまで私個人が皆さんにお伝えしたいと思った内容であり、私の言葉で皆さんにわかりやすいように綴ったものです。
内容に関しましては私の勤務先や所属団体とは一切関係のないことを
予めお断りしておきます。

 

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